ビジャマリア情報21

 

2005.4.20

Villa Maria, Cordoba, Argentina

須郷 隆雄

 

 4月2日はマルビーナスの日だ。所謂イギリスとのフォークランド紛争が始まった日である。この式典が、50キロ離れた隣町のオリバで行われることになった。毎年この町で、ガウチョ祭がこの時期に開催される。今年は同時開催となった。

 ガウチョ祭に参加する当校教師に誘われ、朝7時に出発する。この教師は牧場を持ち、100頭の乳牛を飼っている。云うならば、本来ガウチョなのだ。ガウチョスタイルに正装したこの教師とともに、婚約者の待つ彼女の家に向かう。家族が我々を迎えてくれる。熱心にテレビを見ているので聞いてみると、ローマ法王が危険な状態だという。万一亡くなることになれば、祭典は即座に中止し、喪に服さねばならないとのことであった。さすがカトリックの国、ローマ法王をパパと慕っているだけのことはある。朝食を済ませ、馬7頭を輸送車に積み、母親を残し祭典に参加する婚約者とその父親、弟2人、牧童とともに祭の行われるオリバに向かう。

        

     コルドバ州知事デラソタの挨拶          軍隊の行進

 かなりのガウチョが集まっている。準備の間、彼の親戚家族に連れられて式典会場に向かう。黒山の人だ。軍隊の護衛を受け、コルドバ州知事デラソタがオープンカーで到着する。21発の号砲、国歌の斉唱。そしてお歴々の挨拶、表彰と続き、戦没者兵士への追悼の辞。まるで映画の1シーンを見るような演劇的演説であった。意味は良く解らなかったが、とにかくうまい。感動した。涙を流すものもあった。デラソタの挨拶に続き、軍隊の行進だ。陸軍、海軍、空軍、海兵隊と続き、警察官、その後になぜか消防隊も行進する。格好は良いが強そうには見えない。マリビーナス戦争から今年で23年目だ。2ヶ月で敗れ、今は統治権をイギリスに渡している。近代兵器の前に、あっという間の敗退であったと聞く。第二次世界大戦にしても、イタリアのようにラテン系は戦争向きではないようだ。歌や演説、セレモニーが得意分野のようにみえる。空軍機の編隊飛行、しかしプロペラ機だ。戦車はない。火器は大砲が5門だけだ。落下傘部、5人ほどが国旗や州旗を持って降りてくる。

 いよいよガウチョの行進だ。今年はマリビーナスに主役を譲ったため参加者が昨年より少ないようだ。昨年は単独のガウチョ祭であったので、馬は100頭以上、しかもロディオのような競技もあった。しかし皆気持ち良さそうに乗っている。1年に1度の晴れ姿だ。我々のグループも国旗と団旗を掲げ、颯爽の行進であった。終了後、ガウチョ達と昼食、30人ほどが一同に会し、用意された弁当でワインと歓談を楽しむ。例年なら、木の下でアサードである。午後2時、お開き。法王はまだ無事のようだ。帰りのトラックの中、ワインと疲れからうつらうつら、婚約者の肩を枕に。心地よい眠りであった。別れ際、フォルクローレを一緒に習うことを約束してしまった。

        

       仲間の行進(父親、教師、婚約者)       我がグループ

 家に帰るとローマ法王が4時半に逝去されたと報じられていた。84歳であったという。世界中が深い悲しみに包まれた。特にカトリックの国、アルゼンチンは尚更のことであろう。カトリック信者は、神は3人いると言う。1人はもちろんキリストである。もう1人は聖母マリア、もう1人はローマ法王いわゆるパパである。しかも同列に崇拝しているようだ。良く日本人は何を崇拝しているかと聞かれる。日本人は皆仏教徒かとも。答えに窮してしまう。日本人が神を意識するのは、年に1度の初詣と結婚式と葬式だけだと言うと、信じられないという。宗教観が違うということもあるだろうが、唯一神を信ずる国民からすれば、理解できない国ということになるのであろう。鰯の頭も信心からと言うように、森羅万象全てのものに神を感じているのが日本人だ。いわゆる汎神論だ。もしパパに相当するものを日本で言うなら、天皇ということになるだろうねと言うと納得していた。

 ローマ法王フアン・パブロ2世に深甚なる哀悼の意を表した。
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